陰謀論?それって本当に陰謀論ですか?――歴史的事実から陰謀論を考えてみる

「それ、陰謀論でしょ」
この一言で話を終わらせる人は多いです。

でも日本でも、「そんなことあるわけがない」と思われていた話が、後から公文書や政府資料で事実だったと確認された例はあります。

だから大事なのは、笑うことでも信じ込むことでもない。
まず資料を見ることです。

「陰謀論」と「陰謀」は同じではありません

最初に整理しておきたいのはここです。

陰謀は、権力や組織が人目につかない形で何かを進めたり、隠したりすること。
陰謀論は、それを説明する主張です。

つまり、陰謀が実際にあったことと、出回っている話が全部正しいことは別です。

逆に言えば、「陰謀論っぽい」と見えるから即デマとも言えません。
過去に本当にあった不正や隠蔽を見れば、それははっきりします。

日本でも「そんなはずがない」が、後で事実になった例はある

1.森友学園問題――「公文書改ざんなんてするわけがない」は崩れた

森友学園問題では、財務省自身が公式に、決裁を経た行政文書の改ざんがあったと認めています。

財務省の公式ページでは、「決裁を経た行政文書を改ざんし、それを国会等に提出するようなことは、あってはならないことであり、誠に遺憾」と明記されています。
また、別の財務省ページでは、昨年2月下旬から4月にかけて、本省理財局において、森友事案に関する複数(14件)の決裁文書の書き換えが行われていたことが明らかになったとされています。

つまりこれは、単なる「疑惑」ではなく、役所自身が改ざんを認めた話です。

ここで重要なのは、最初に疑った人を「考えすぎ」と片付けていた空気があったことです。
しかし実際には、“そんな露骨なことを官庁がやるはずがない”という常識のほうが外れたわけです。

出典:財務省|決裁文書の改ざん等に関する調査報告書について
URL:https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20180604chousahoukoku.html

関連出典:財務省|決裁文書に関する調査について
URL:https://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/search_kessaibunsho.htm

2.イラク日報問題――「文書はない」ではなく、「あったのに上まで報告されていなかった」

防衛省のイラク日報問題も同じです。

防衛省の公式資料では、調査を通じて、防衛大臣の指示に対し組織として適切に応えておらず、国会議員の質問、資料要求、情報公開請求に対して不適切な対応をし、それを速やかに正すことができなかったと明記されています。

さらに防衛白書では、2017年2月22日に再探索指示が出ていたのに、同年3月27日の時点で研究本部においてイラク日報が発見されていたにもかかわらず、当時の防衛大臣まで報告が行われていなかったことが判明したと記されています。
そのうえで、関係者17名に対する処分が行われたことも公表されています。

これは、「最初から巨大な秘密計画があった」とまで言う話ではありません。
ただ少なくとも、組織が不都合な情報をきちんと上げず、国会や情報公開請求への対応も不適切だったことは、公的資料で確認できます。

ここでの対立点も一応書いておくべきでしょう。
この問題を「組織的隠蔽」と見る人もいれば、「縦割りと文書管理のずさんさ、官僚組織の自己保身が重なった結果で、いわゆる秘密結社型の陰謀ではない」と見る人もいます。
ただ、どちらの見方でも共通するのは、「ない」と扱われていた文書が、実際には存在し、しかも適切に報告されていなかったという点です。

出典:防衛省|「イラク日報」に関する調査チーム報告書等について
URL:https://www.mod.go.jp/j/press/report/2018/05/25a.html

関連出典:防衛省|平成30年版防衛白書 2 情報公開・文書管理に関する取組
URL:http://www.clearing.mod.go.jp/hakusho_data/2018/html/n35202000.html

3.薬害エイズ事件――「国がそんな重大な失敗を放置するはずがない」は通用しなかった

薬害エイズ事件は、もう「陰謀論」という軽い言葉で処理できる話ではありません。

厚生労働省の公式ページには、「薬害エイズ事件」の反省から、血液製剤によるHIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないようにという文言があり、その決意を刻んだ「誓いの碑」が設置されています。

碑文には、「千数百名もの感染者を出した『薬害エイズ』事件」という表現もあります。
つまり国自身が、これは単なる事故ではなく、深刻な制度的失敗として反省すべき事件だったと位置づけているわけです。

この件も、厳密には「秘密の計画があった」という意味での陰謀とは少し違います。
むしろ、危険情報への対応の遅れ、制度の不備、責任回避が積み重なって被害が広がったケースと見るのが妥当です。

ただ、一般の感覚ではしばしば、「国や大組織がそこまでひどいことを放置するはずがない」という思い込みがあります。
しかし現実には、その「まさか」は起きています。

出典:厚生労働省|誓いの碑
URL:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/chikainohi/

ここで言いたいのは、「怪しい話は全部本当だ」ではありません

この手の記事を書くと、すぐ誤解されます。

でも私は、「だからネットで流れている陰謀論も全部本当だ」と言いたいわけではありません。
それは違います。

本当に言いたいのは逆です。

過去に本当にあった不正や隠蔽を知っているなら、今の話を“陰謀論”の一言で雑に片付けるべきではない。
同時に、根拠のない話まで勢いで信じるべきでもない。

この両方が必要です。

見るべきは「ラベル」ではなく「根拠」です

では、どう見分けるのか。
私は少なくとも次の4つを見たほうがいいと思います。

① 物的証拠があるか

公文書、報告書、会議録、録音、判決、内部資料。
まずはここです。今回挙げた事例は、少なくとも公的機関の資料で確認できるものです。

② 一次情報までたどれるか

SNSの切り抜きではなく、元の省庁資料や報告書まで行けるか。
行けない話は、やはり慎重に見たほうがいいです。
しかし、現在進行中の場合は一次情報が無いこともよくあることです。
その場合も、「陰謀論」で片づけず、主張に妥当な根拠があるかどうかも検討しなければなりません。

③ 反対説にも一定の根拠があるか

たとえばイラク日報問題は、「意図的隠蔽」と見る側もいれば、「組織運営の崩れと自己保身」と見る側もあります。

④ 「信じたい結論」が先に来ていないか

これは権力批判側にも、権力擁護側にも当てはまります。
“まさかそんなことはしない”も思い込みだし、“きっと全部つながっている”も思い込みです。

まとめ――日本でも、「そんなわけない」は外れてきた

日本ではよく、「この国ではそこまで露骨なことはしない」という空気があります。

でも実際には、

  • 財務省は公文書改ざんを認めた
  • 防衛省は、存在していた日報が適切に報告されていなかったと認めた
  • 厚生労働省は、薬害エイズ事件を反省し再発防止を誓う碑まで設置した

つまり日本でも、「そんなはずがない」で済ませてはいけない現実は、すでに何度も起きています。

だから必要なのは、何でも疑うことでも、何でも信じることでもありません。

「陰謀論」という言葉を使う前に、一次資料を見ろ。
それだけです。

遠い国の話ではありません。
この国でも実際に起きてきた話です。


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